北海道新幹線2016.3新函館北斗開業ウェブサイト

函館商工会議所が所管する新幹線推進団体の活動アーカイブです

‘新函館北斗開業Q&A’ 分野の情報一覧

【質問】JR北海道が新幹線車両を発注したという報道がありましたが、デザインや設備などはまだ公表されておらず、一体どんな車両になるのでしょうか。

【お答え】ご質問の件は、3月12日のJR北海道社長定例記者会見で、同社が2月に東北新幹線E5系をベースに4編成40両(180億円)を発注し、年内納入と試験運行開始の方針を明らかにしたと新聞等が報じたものです。しかしながら、発注した車両デザインや設備・特徴等に関する同社のプレスリリースは4月1日時点では行われておらず、同社の準備対応の遅れを指摘する報道も多くみられます。

新函館開業までの残り期間は2年を切ったところですが、それより1年早く開業する北陸新幹線の2年前の動き(別表)と比較すると、3セク鉄道会社設立や新幹線車両概要の発表は既に7か月も遅れが生じています。北陸の動きを目安とすれば、北海道新幹線も今年5月には愛称募集が行われ、6月には駅名が決定、10月には列車愛称と運行体系が発表されて新車両が納入、年末には試運転開始、など様々な出来事が想定されます。JR北海道は4月から新経営陣となっており、開業に関する取り組みの挽回が期待されます。

(別表)北陸新幹線開業2年前の動き

年月日 内容 情報元
2012/08/28 石川県並行在来線3セク会社設立(富山は7月) 3セク
2012/09/04 E7・W7系車両デザイン発表 JR
2013/04/01 JR東日本北陸営業センター設置(金沢市) JR
2013/05/28 列車名(愛称)募集 JR
2013/06/07 駅名発表 JR
2013/10/02 運行体系(運行区間・停車駅)発表 JR
2013/10/10 列車名発表 JR
2013/10/30 E7系仙台港陸揚げ 報道
2013/11/28 E7系報道公開(仙台・総合車両センター) JR
2013/12/02 長野・黒部宇奈月温泉間走行試験開始(―3月末) 機構
2013/12/06 並行在来線3セク会社事業許可申請 3セク
2013/12/09 E7系試乗会募集開始 JR
2013/12/12 JR在来線廃止届出 JR
2013/12/14 グランクラス座席展示イベント(―1/13) JR
2014/02/07 E7系試乗会実施(―9日) JR
2014/02/13 E7・W7系シンボルマーク発表 JR
2014/02/28 並行在来線3セク会社に事業許可 国交省
2014/03/01 JR金沢・富山駅等で1年前イベント(―月末) JR
2014/03/15 E7系運行開始(東京・長野間) JR
2014/04/01 JR西日本白山車両基地開所 報道

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【質問】北海道新幹線の開業とひきかえに、北海道と本州を結ぶ寝台列車などが廃止される予定という記事が昨年末に新聞に載りましたが、本当ですか。

 

【お答え】ご質問の件は平成25年11月、現在運行中の寝台特急「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」が平成27年度末までに廃止予定と複数の全国紙が報じたものですが、平成26年2月時点では廃止に関するJR各社の公式発表はありません。

新幹線開業の2年も前から廃止が取り沙汰される背景には、寝台列車を牽引する機関車の問題があります。青函トンネル共用区間を挟む青森・函館間は、貨物牽引はJR貨物が担当し、客車牽引はJR北海道が現在9両保有しているED79型機関車を運行させていますが、平成27年度末の北海道新幹線開業の際には、新幹線区間(新中小国信号場・木古内駅間)の2万5千ボルトと、在来線区間(青森駅・新中小国信号場、木古内駅・函館駅)の2万ボルトの二電圧に対応した複電圧機関車が必要となり、ED79型は運行できなくなります。これに代わる新型の複電圧対応機関車EH800型は既に試作車による運行試験が行われ、新幹線開業までに20両が製造される予定ですが、製造はJR北海道ではなくJR貨物が行っています。そして、JR旅客会社の客車列車をJR貨物の機関車を借りて牽引することは、ほぼ例がない状況です。

つまり既存の仕組みのなかで北海道新幹線開業後も寝台列車の運行を継続させるためには、JR北海道またはJR東日本がEH800型機関車を新製保有する必要がありますが、JR北海道としては五稜郭・木古内間を経営分離することなどで運行区間の殆どが他社の所管路線となり、他社への線路使用料を負担してまで新型機関車を導入し運行するメリットが小さいことや、昨今のJR北海道不祥事の影響から安全対策投資の優先度が高まっていることが導入の障壁とされています。また、JR東日本での導入可能性については、新型機関車が会社利益に寄与する投資と位置づけられるかどうかが一つのポイントになります。加えて、この機関車が貨物用に開発された高性能なものであるため、旅客向け投資としては過大とされているという見方もあります。

この問題は、旅客と貨物、新幹線と在来線、JRと並行在来線、JR会社間の調整など、既存の仕組みによって解決させることの難しさを象徴しているものですが、北海道・本州間を結ぶ寝台列車は、北海道旅行の魅力や多様性の維持向上のためにも、新幹線開業後にJRから経営分離される五稜郭・木古内間を担当する第三セクター鉄道会社の収益安定化のためにも不可欠であるといえ、沿線自治体ではJRに対し運行継続の要望を行っているところであり、引き続き注視すべき事項といえます。


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【質問】新函館駅と現函館駅を結ぶアクセス列車には、観光客や市民から親しみを持って乗ってもらえるように、愛称を付けたらどうでしょうか。

【お答え】平成27(2015)年度末の北海道新幹線新函館開業に合わせ、JR北海道は新函館駅・現函館駅間を電化し新型車両を投入してアクセス列車を運行すると表明しています。このアクセス列車の運行充実化には函館市民から大きな注目と高い期待が寄せられており、函館市と函館市議会は合同でJR北海道に対し、平成25年7月に「新函館・現函館駅間における利用者の利便性や快適性が確保された車両の導入」を要望、函館商工会議所に事務局を置く官民連携組織「北海道新幹線新函館開業対策推進機構」においても同年11月、JR北海道に対し「編成増結や続行運転などアクセス列車の混雑緩和策の実施」「函館らしさを感じることができる車両の導入」などについて要望を行っています。

 ご質問の列車愛称については、同年6月の函館市議会において「アクセス列車について盛り上げていかなければならないと思っており、市民の声を反映した取り組みを実施できないか」との質問に対し函館市が「地域住民にも愛される列車としていくことも大切で、例えばその列車の愛称を市民、住民から募集するなどして、その声を反映するということは、やはり地域住民の機運醸成にも効果的であると考えており、JR北海道ともよく相談をしてまいりたい」と答弁をしており、愛称公募が検討されていることがわかります。

 列車愛称は運行主体のJRが定めるもので、過去にはJR各社が新幹線の列車愛称を公募した事例が多数あるほか、JR北海道においても平成19年10月の特急「スーパーカムイ」運行の際は約半年前に愛称募集を行っています。JR以外でも、平成23年に鳥取県庁等による広域観光連携協議会が山陰本線で新たに運行する快速列車の愛称を募集・選考のうえ提案、JR西日本が決定したという連携事例があります。

 JR北海道は多くの快速列車に列車名を付けて運行しており(下表参照)、新函館・現函館間アクセス列車にも列車名が付くことは十分に想定されますが、愛称公募はニュースバリューを高め全国に情報発信するうえでも有益な方法であり、市民の気運をより高めるためにも、愛称公募企画の展開について地元自治体等からの積極的な働きかけと、JR北海道による愛称採用が期待されるところです。

【JR北海道が運行している快速列車と列車名称】

快速列車名

運転区間

アイリス

長万部⇒函館

ニセコライナー

倶知安・蘭越⇔札幌

エアポート

小樽⇔札幌⇔新千歳空港

いしかりライナー

小樽⇔札幌⇔岩見沢

狩勝

滝川・旭川⇔帯広・池田・釧路

なよろ

旭川⇔名寄・音威子府・幌延

きたみ

旭川⇔北見

はなさき・ノサップ

釧路⇔根室

しれとこ

釧路⇔網走


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【質問】(前回に引き続き)新函館駅と函館市内の二次交通がどうなるのか、JRが整備するアクセス列車についても、運行ダイヤは直前まで非公表とのことですから、いっそのことリムジンバスを充実化したら如何でしょうか。

 

【お答え】前回までは新函館駅と函館市内の二次交通の充実化のためバス・乗合タクシー等の利活用について触れましたが、今回は道南地域として捉えた場合のポイントをご紹介します。

函館市エリアと異なり、道南のその他エリアは人口も少なく、JR函館本線の沿線以外では、地域間を結ぶ公共交通の便数は少ない状況です。加えて、それら公共交通の大半が生活路線として位置づけられているため、駅など交通拠点における他交通機関との接続が最優先されている状況ではなく、接続案内などもまだ不十分な面が多くあります。例えば新幹線開業後に江差や奥尻島への周遊観光ルートを売り込もうとした際には、新幹線から木古内・江差間の路線バスを経て江差・奥尻間のフェリーが1つの路線として繋がっているように見せていくことが求められますが、現状は、季節によって都度変更されるフェリー運航時刻と路線バスの運行時刻が接続対応しておらず、接続待ち時間が長く生じるものとなっています。

九州新幹線の開業地域では、様々な交通機関が連携して1つの観光ルートを構築し課題解決を果たしたケースがあります。例えば熊本・三角港と天草・本渡港を結ぶフェリーは九州新幹線開業に合わせ「天草宝島ライン」と称し「天草と九州各地を船とJRで結ぶ新しい公共交通」というキャッチフレーズを用いて、JRの新幹線・特急列車と完全接続したダイヤを構築し、自社のwebサイトではJR運行時刻も含めた案内を行っています。こうした取り組みは各地に波及し、南天草と鹿児島県を結ぶフェリー会社では、九州新幹線開業を契機に、自社フェリーの鹿児島側拠点である蔵之元港と新幹線出水駅とを結ぶシャトルバスを地元バス会社と連携して運行、自社のwebサイトでも接続ダイヤを掲載してPRし、ルート創出と定着化に努めています。道南地域においても、新幹線開業に向けて交通事業者間の更なる連携と情報発信が求められます。

(参考URL)

天草宝島ライン http://www.seacruise.jp/teiki/

三和フェリー http://www.ezax.co.jp/

(写真)自社のwebサイトで接続交通機関の時刻案内を行うフェリー会社

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【質問】(前回に引き続き)新函館駅と函館市内の二次交通がどうなるのか、JRが整備するアクセス列車についても、運行ダイヤは直前まで非公表とのことですから、いっそのことリムジンバスを充実化したら如何でしょうか。

【お答え】前回は、新幹線駅と市街地を結ぶシャトルバス・路線バスの事例から、運行継続のために求められる要点について触れましたが、地域によってはバス事業が成立しづらいケースも見られ、その場合どのように利用者利便を維持確保しているのか、代替輸送サービスについて東北新幹線沿線の取り組み事例をご紹介します。

青森県むつ市(人口約6万人)は、新幹線の最寄り駅である七戸十和田駅と約80km離れており、同駅が在来線鉄道と接続しない駅であることから、バスかタクシーによるアクセスが求められました。平成22年12月の同駅開業を機に、地元の乗合バス会社がむつ市内と同駅を結ぶシャトルバスを1日2往復運行しましたが、利用低迷により僅か1年で廃止となってしまいました。そこで、バス路線を引き継ぐ形で地元タクシー会社が同区間の乗合タクシー運行に参入、現在も1日6.5往復が運行されています。

同じ七戸十和田駅では、約14km離れた十和田市(人口約6.5万人)中心部との間に路線バスの運行が開始されましたが、バスの営業時間が短く、早朝出発や深夜到着の新幹線利用者はバスに乗り継げないという問題が事前に指摘され、路線バスを補完する目的で早朝・深夜運行の乗合タクシーが運行を開始しました。現在は早朝便が廃止され、同駅発の深夜便2便が運行されています。また八戸駅でも、路線バス営業終了後に東京から到着する最終便に接続し、約6km離れた中心市街地へ向かう乗合タクシーが運行されています。

乗合タクシーの運行には国交省の認可が必要で、代替交通機関がないことや地元自治体における公共交通協議組織の承認などが要件となっており、タクシー事業者単体の意思で実施できるものではありません。新函館開業に向けて乗合タクシー運行を実現させるためにはまず地元協議の早期着手が必要です。また、運行実現後においても、利用しやすさ(予約の要・不要)や広報周知が課題となり、地元住民の認知向上はもちろんのこと、観光客・来街者への周知をどのように行っていくか、例えばインターネットの乗換検索サービスでは、路線バス時刻は表示されても乗合タクシー情報までは網羅されていないため、旅行業者や宿泊施設を通した広報周知など、利用者利便維持のための継続的な取り組みが求められます。

(参考)七戸十和田駅・八戸駅での深夜接続乗合タクシー

下北方面・・・(尻屋観光シャトル便)
http://www.shirikan.jp/cabsyatoru.html

七戸町・十和田市方面・・・「夜ぷらす」
http://www.town.shichinohe.lg.jp/sightseeing/item.asp?g=9&c=295&i=11600

八戸市中心部方面・・・「シンタクン」
http://www.city.hachinohe.aomori.jp/index.cfm/9,37208,73,239,html


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【質問】(前回に引き続き)新函館駅と函館市内の二次交通がどうなるのか、JRが整備するアクセス列車についても、運行ダイヤは直前まで非公表とのことですから、いっそのことリムジンバスを充実化したら如何でしょうか。

 

【お答え】新函館駅と函館市内の二次交通の充実化については、国内において、都市の中心部から離れた場所にある空港や新幹線駅と都心を結ぶアクセス交通の事例から、ヒントを得ることができます。

1つめは仙台空港のケースです。仙台市中心部と同空港間の距離は、新函館・函館間のJR営業距離17.9kmとほぼ同等であり、かつては市営バスのリムジンバスが頻繁に運行していました。平成19年3月に仙台空港鉄道が開業し、仙台駅・仙台空港間17.5kmを1日40往復(1時間あたり3往復程度)、所要時間17―25分程度で運行されることになったため、空港鉄道開業と同時に市営リムジンバスは廃止され、代替需要を見込んで民営のバス会社2社がリムジンバスに新規参入したのですが、需要が維持できず平成21年には民営バスも廃止となり、現在において仙台市中心部と仙台空港を結ぶ路線バスは運行されていません。

2つめは八戸駅のケースです。平成14年の東北新幹線八戸開業に合わせ、八戸市営バスでは八戸駅と同市中心街約6kmを結ぶ「新幹線シャトルバス」を運行させましたが、自社の既存路線や民営バス路線との競合によって事業継続できず、僅か2年後の平成16年に廃止となりました。しかし、同市の公共交通再生を目指した取り組みによって平成20年、八戸駅と同市中心街を結ぶ路線を市営バスと民営バスが共同運行し、運行ダイヤの等間隔化(日中10分間隔)や乗り場の共通化、共通乗車券利用可能などの施策を展開した結果、両事業者ともに運行経費削減と利用者増加が実現し、現在に至っています。

二次交通としてシャトルバス・路線バスが事業継続できるためには、競合する交通機関との関係、新函館駅と函館市内を結ぶ場合であればJRのアクセス列車とどのように役割を分担させるかが課題となります。鉄道と比較したバスの優位性は「(自宅や会社から)停留所が近い」「乗降が楽」「(乗継などがなく)所要時間が早い」「座って行ける」といった点にあり、当地においてこれらを生かしたバス事業を行うためには、美原・五稜郭・湯の川地区など、現函館駅と離れた地域を直接結ぶというような優位性が必要となります。また、八戸市のケースからも、シャトルバス単体でアクセス機能を果たすのではなく、生活交通路線を取り込む形で利用者の利便性が高いサービスを提供することが、結果的にはバス運行の継続につながることになるといえ、新函館開業においてもこうした事例を踏まえた取り組みが必要と考えられます。

 


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【質問】新函館駅と函館市内の二次交通がどうなるのか、JRが整備するアクセス列車についても、運行ダイヤは直前まで非公表とのことですから、いっそのことリムジンバスを充実化したら如何でしょうか。

【お答え】新函館駅と函館市内の二次交通に関して現時点で明らかになっているのは、JR北海道が新函館・函館間を電化し新型電車を導入して同区間を約17分で結ぶということだけであり、その編成車両数や1日の運行本数、快速運転なのか各駅停車なのか、など運行体制が明らかにされるのは、過去の新幹線開業地域のケースによれば開業直前(約半年前)であるため、JRを含めた二次交通のあり方に懸念を持つ方が函館地域には多くいらっしゃいます。
 そうした方々の思いを十分に踏まえ、商工会議所に事務局を置く北海道新幹線新函館開業対策推進機構では、函館地域における二次交通の充実化及び利用者利便性の向上を目的に、平成25年3月に「二次交通充実化部会」を設置し、市や観光協会とともに下記3項目について諸施策の検討協議を進めています。

(1) 新函館駅・現函館駅間の鉄道アクセス及び新幹線運行・サービスの充実化
(2) 新函館駅と市内拠点を結ぶバス路線網、観光路線バス及び交通拠点のあり方
(3) 二次交通のわかりやすさ、利用しやすさの向上

 今回ご指摘頂いたように、バスアクセスの充実化も同部会の重点項目であり、今後は施策案を固めた上で関係事業者と調整を進めていくこととしています。
 なお、沿線住民以外にはあまり知られていませんが、渡島大野駅(新函館駅)と函館市内を結ぶバスは現在、平日合計30便が運行されています。(下表参照)この路線は生活交通路線として道などの補助金を得て運行されているため、新幹線開業に向けては、各種の制約をクリアして既存路線を利活用することや、リムジンバスのような運行形態が採算的に成立するのかなど、全国各地の成功事例や失敗事例を踏まえながら、いかにしてバス交通を充実化させていくか協議していくこととしています。(次号に続く)

■渡島大野・函館市内間のバス路線(H25.8現在)
 ※函館駅との運賃640円、所要時間50分、本数は平日ダイヤ

系統番号・主な経由地

下り

上り

[2]函館駅・ガス会社・市立病院

3

5

[21]亀田支所・湯川・五稜郭・市立病院

1

1

[25]松風町・五稜郭・亀田支所

4

4

[122]松風町・五稜郭・ガス会社・市立病院

6

6

合計

14

16


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【質問】(前回に引き続き)新幹線の青函トンネル区間は速度制限がかかり、所要時間が延びることに決まったとの新聞報道がありましたが、どんな影響が考えられますか。

 

201306share【お答え】前回は新幹線の「4時間の壁」に触れました。目的地までの交通手段を選ぶ要素には、運賃、所要時間、乗換回数、サービス内容など様々なものがありますが、新幹線と空路の選択において大きな要素となっているのが所要時間であり、選択分岐点が4時間とされています。表は所要時間4時間前後の区間におけるJR・航空シェアの一覧ですが、新幹線のシェアは4時間を境に低くなるのがわかります。

北海道新幹線新青森・新函館間は、平成16年12月に国土交通省鉄道局が公表した事業評価結果に基づき着工されており、その際の所要時間は東京・函館間約4時間6分、青函共用区間の最高時速は260kmで計算され、費用便益比(B/C)は1.4とされていました。

その後、平成23年に鉄道・運輸機構が作成した資料では、東京・函館間の所要時間は青函共用区間時速140kmを反映させ約4時間20分、諸条件を踏まえたB/Cは1.1と再算定され、公共事業の進捗要件である1.0を辛うじて上回った状態にあります。そして同資料では、青函共用区間が時速260kmの場合は、140km時と比較して1日あたり利用者が1,200人キロ/km増加し、便益額は1,488億円増加、B/Cは1.4と見込んでいます。

これら資料から言えるのは、青函共用走行区間の速度制限は新幹線着工時に本来想定された便益を大きく阻害しているということであり、地元である函館・道南が主体的に受入環境整備を進めたとしても新幹線利用者の誘発や便益向上には限界があるということでもあります。

北海道が新幹線開業によって本来見込まれていた便益と経済効果を享受するためには国レベルでの対策が不可欠であり、地元関係機関や事業者がその重要性をしっかり認識し、早期解決を求めていく必要があると言えます。

(参考資料)JR東日本ファクトシートJR西日本ファクトシート鉄道・運輸機構事業評価監視委員会付属資料


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