北海道新幹線2016.3新函館北斗開業ウェブサイト

函館商工会議所が所管する新幹線推進団体の活動アーカイブです

【質問】北海道新幹線の開業とひきかえに、北海道と本州を結ぶ寝台列車などが廃止される予定という記事が昨年末に新聞に載りましたが、本当ですか。

 

【お答え】ご質問の件は平成25年11月、現在運行中の寝台特急「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」が平成27年度末までに廃止予定と複数の全国紙が報じたものですが、平成26年2月時点では廃止に関するJR各社の公式発表はありません。

新幹線開業の2年も前から廃止が取り沙汰される背景には、寝台列車を牽引する機関車の問題があります。青函トンネル共用区間を挟む青森・函館間は、貨物牽引はJR貨物が担当し、客車牽引はJR北海道が現在9両保有しているED79型機関車を運行させていますが、平成27年度末の北海道新幹線開業の際には、新幹線区間(新中小国信号場・木古内駅間)の2万5千ボルトと、在来線区間(青森駅・新中小国信号場、木古内駅・函館駅)の2万ボルトの二電圧に対応した複電圧機関車が必要となり、ED79型は運行できなくなります。これに代わる新型の複電圧対応機関車EH800型は既に試作車による運行試験が行われ、新幹線開業までに20両が製造される予定ですが、製造はJR北海道ではなくJR貨物が行っています。そして、JR旅客会社の客車列車をJR貨物の機関車を借りて牽引することは、ほぼ例がない状況です。

つまり既存の仕組みのなかで北海道新幹線開業後も寝台列車の運行を継続させるためには、JR北海道またはJR東日本がEH800型機関車を新製保有する必要がありますが、JR北海道としては五稜郭・木古内間を経営分離することなどで運行区間の殆どが他社の所管路線となり、他社への線路使用料を負担してまで新型機関車を導入し運行するメリットが小さいことや、昨今のJR北海道不祥事の影響から安全対策投資の優先度が高まっていることが導入の障壁とされています。また、JR東日本での導入可能性については、新型機関車が会社利益に寄与する投資と位置づけられるかどうかが一つのポイントになります。加えて、この機関車が貨物用に開発された高性能なものであるため、旅客向け投資としては過大とされているという見方もあります。

この問題は、旅客と貨物、新幹線と在来線、JRと並行在来線、JR会社間の調整など、既存の仕組みによって解決させることの難しさを象徴しているものですが、北海道・本州間を結ぶ寝台列車は、北海道旅行の魅力や多様性の維持向上のためにも、新幹線開業後にJRから経営分離される五稜郭・木古内間を担当する第三セクター鉄道会社の収益安定化のためにも不可欠であるといえ、沿線自治体ではJRに対し運行継続の要望を行っているところであり、引き続き注視すべき事項といえます。


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