北海道新幹線2016.3新函館北斗開業ウェブサイト

函館商工会議所が所管する新幹線推進団体の活動アーカイブです

【質問】(前回に引き続き)現在は仮称となっている新函館駅の駅名問題に関心があります。全国ではどのような問題があるのでしょうか。

【お答え】駅名と自治体名を巡る問題として著名な、山陽新幹線「新山口駅」のケースを見てみます。同駅の前身「小郡駅」は、明治22年開村の「小郡村」(明治34年小郡町に昇格)の駅として明治33年に開業し、昭和50年3月には新幹線「小郡駅」も開業しました。

 小郡町は県庁所在地である山口市の南西約13kmに位置し、戦中・戦後にも山口市との合併・離脱がなされた歴史があったことを背景に、平成以降、自治体合併への具体的な動きが経済界主導で進み、平成14年4月には山口・小郡両商工会議所の合併が実現しました。

 また、平成5年に東京・博多間の運行となった新幹線「のぞみ」号の小郡駅停車を求める運動も県議会や経済界を中心に活発化しており、平成15年1月と2月に小郡町など2市4町連名で行われたJR西日本への要望活動に対し同社から4月、営業戦略上「のぞみ」号停車実現のためには「小郡駅」から「新山口駅」への駅名改称が必要との見解が山口県に示されました。僅か2週間程度しかない回答期限のなかで関係自治体ではこれを了承し、同社が提示した駅名改称費用4億2,880万円の半額を県と関係自治体が負担する形で、平成15年10月、新幹線「のぞみ」号停車実現と共に、「小郡町」に「新山口駅」が誕生しました。

 その後、平成16年11月には山口市・小郡町など1市4町による合併協議会が設置され、平成17年10月に新設合併による「山口市」が誕生し、「新山口駅」は名実ともに県都山口市の新幹線駅となりました。

 平成15年当時、JR西日本は県に対し「首都圏・関西圏から見てインパクトがあり、山口県のイメージが伝わりやすい駅名に変更するという、そういう地元からの意向があれば、『のぞみ』の小郡駅停車は現在難航しているJR東海との調整交渉もスムーズにいき、停車実現の可能性が出てくるし、そういう意味で駅名変更は大きな判断材料になっている」と説明しています。

 このように「新山口駅」改称は、県や山口市、経済界などの広域的期待と、山口市合併へ向けたシナリオを背景としつつ、実際にはJRが「駅名改称はあくまで地元要望を踏まえ行う」という手順も含め主導しており、小郡町議会や町民の駅名改称是非の論議は、結果的に考慮・反映されませんでした。新函館駅の名称問題についても、地元論議で不毛な時間を要しないよう、注意する必要があると言えます。

(参考文献:旧小郡町議会、旧山口市議会、山口県議会議事録)


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